子どもの体力低下が示す危機 ― 学校プール削減と運動習慣の喪失が進行中
近年、「子どもの体力が落ちている」という声を、保護者や教育現場から耳にする機会が増えています。その背景には、外遊びの減少やスマホ利用時間の増加、コロナ禍による運動機会の喪失など、複数の要因が重なっています。なかでも見過ごせないのが、学校プールの削減によって水泳授業が縮小されている現実です。水泳は全身を使う運動であり、基礎体力や心肺機能、肥満予防にも効果的とされています。しかし今、その貴重な機会が失われつつあります。
本記事では、最新のデータをもとに子どもの体力低下の実態を整理し、親として・地域として何ができるのかを考えていきます。

学校プール削減が加速し、“泳げない子ども”が増加している現実

学校教育の現場では今、プール授業を維持すること自体が大きな課題となっています。かつては当たり前だった「夏の水泳授業」が、老朽化や猛暑、コスト面の問題から見直され、十分な授業時間を確保できない学校が増えています。その結果、25m完泳や基礎泳力を身につけないまま小学校を卒業する子どもも珍しくなくなりました。水泳は単なる技能ではなく、命を守る力でもあります。学校プール削減が、子どもたちにどのような影響を与えているのかを整理します。
老朽化・猛暑・維持管理費の高騰が引き起こす「学校プール削減」
全国の小学校では、プール施設の老朽化が深刻化しています。建設から40年以上経過したプールも多く、改修や建て替えには多額の費用が必要です。さらに近年は猛暑の影響で、水温・気温の基準を満たせず授業を中止せざるを得ない日も増えています。加えて、ろ過装置の管理や水質検査、監視体制の確保など、維持管理の負担は年々重くなっています。こうした事情から、やむを得ずプールを廃止し、民間施設へ委託する自治体も増加しています。
授業回数が激減し、基礎泳力を習得できない子どもが増加
学校プールが残っている場合でも、水泳授業の回数は大きく減少しています。以前は年間10コマ前後確保されていた授業が、現在では3〜4コマ程度にとどまる学校も少なくありません。この回数では、水に慣れるだけで精一杯となり、25m完泳や「泳ぎ続ける力」を身につけることは難しいのが実情です。結果として、基礎泳力が定着しないまま学年が進み、水泳に苦手意識を持つ子どもが増える要因にもなっています。
民間スイミングスクール依存が進み、地域ごとの「水泳格差」が拡大
学校での水泳機会が減少する一方、その代替として民間スイミングスクールに通う家庭も増えています。しかし、通えるかどうかは家庭の経済状況や送迎の可否に左右されやすく、地域差も大きいのが現実です。その結果、「十分な水泳指導を受けられる子」と「学校以外では水に触れる機会がない子」の二極化が進んでいます。水泳教育が家庭任せになりつつある現状は、教育機会の公平性という点でも課題を抱えています。
データが示す深刻な「子どもの体力低下」 ― 運動習慣の喪失が進行中

「最近の子どもは体力が落ちている」と言われることがありますが、これは感覚的な話ではなく、国の調査データからも明確に示されています。文部科学省の学校体力・運動能力調査では、握力やシャトルラン、反復横とびなど、多くの項目で長期的な低下傾向が確認されています。背景には、外遊びの減少や生活習慣の変化、コロナ禍による運動機会の喪失などがあり、日常的に体を動かす習慣そのものが失われつつあります。こうした体力低下は一時的な問題ではなく、将来の健康や生活習慣にも影響を及ぼす可能性があります。子どもの頃に身につく運動習慣は、その後の人生を支える重要な基盤であることを、改めて意識する必要があります。
学校体力調査が示す長期的な体力・運動能力の低下傾向
文部科学省が毎年実施している学校体力調査では、子どもの体力・運動能力に関するさまざまな項目が測定されています。近年特に課題として挙げられているのが、以下のような基礎的な能力です。
・握力や上体起こしに見られる筋力
・長座体前屈に代表される柔軟性
・シャトルランによる全身持久力
・反復横とびに見られる敏捷性
これらは特別な運動能力ではなく、日常生活を健康に送るための土台となる力です。低下が進むことで、疲れやすさや姿勢の乱れ、ケガのしやすさにつながり、学校生活そのものに影響を及ぼす可能性も指摘されています。
【参考:令和7年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果:スポーツ庁】
運動する子としない子の二極化が進み、日常的な「身体活動量」が減少
体力低下の特徴として近年注目されているのが、「全体が一様に低下している」のではなく、運動する子としない子の二極化が進んでいる点です。スポーツクラブや習い事に通う子どもは一定の運動量を保っている一方、そうでない子どもは外遊びの機会が減り、身体活動量が大きく不足しがちです。スマホやゲームの利用時間増加も影響し、放課後や休日を座って過ごす時間が長くなっています。この差は体力面だけでなく、「運動が苦手」「できない」と感じる意識にも影響し、さらに運動から遠ざかる悪循環を生みやすくなっています。
水泳授業の縮小が“持久力”“心肺機能”の低下に拍車をかける
水泳は全身を使いながら心肺機能を高める運動として知られ、シャトルランなどで測定される全身持久力の向上にも効果的です。また、関節への負担が少ないため、運動が苦手な子どもでも取り組みやすい特徴があります。しかし、水泳授業の縮小により、こうした運動刺激を受ける機会が減少しています。その結果、持久力の低下や肥満予防への影響も懸念されています。水泳は競技としてだけでなく、子どもの基礎体力を支える重要な運動機会であり、その役割を改めて見直す必要があります。
“泳力低下”がもたらす安全リスクと、地域全体の教育課題

水泳授業の縮小や運動機会の減少は、体力低下だけでなく「安全面」にも影響を及ぼします。泳ぐ力は、スポーツ技能である以前に、命を守るための基礎的な力です。近年は、25m完泳ができないまま高学年を迎える子どもや、水に対する不安を強く感じる子どもも増えています。こうした泳力低下は、学校教育だけで解決できる問題ではなく、地域全体で支える視点が求められています。安全確保と教育機会の両立という観点から、今何が課題となっているのかを整理します。
小学校高学年で顕著な「泳ぎ続ける力」低下 ― データが示す危険水域
近年の調査では、25mを一度泳ぎ切ることはできても、一定時間「泳ぎ続ける力」が身についていない子どもが増えていると指摘されています。これは、基礎泳力や全身持久力が十分に育っていないことを意味します。水泳授業の回数が限られることで、フォームの習得や体力づくりまで十分に行えないケースが多くなっています。特に高学年になると、水深が深くなる環境に触れる機会も増えるため、泳ぎ続ける力の不足は安全面でのリスクにつながりかねません。
小学校高学年で顕著な「泳ぎ続ける力」低下 ― データが示す危険水域
近年の調査では、25mを一度泳ぎ切ることはできても、一定時間「泳ぎ続ける力」が身についていない子どもが増えていると指摘されています。これは、基礎泳力や全身持久力が十分に育っていないことを意味します。水泳授業の回数が限られることで、フォームの習得や体力づくりまで十分に行えないケースが多くなっています。特に高学年になると、水深が深くなる環境に触れる機会も増えるため、泳ぎ続ける力の不足は安全面でのリスクにつながりかねません。
“水辺に慣れていない子ども”の増加が水難事故のリスクを高める
泳力低下とともに懸念されているのが、水そのものに慣れていない子どもが増えている点です。水に顔をつける、浮く、呼吸を整えるといった「水慣れ」は、短期間では身につきにくい力です。学校や家庭で水に触れる経験が少ないまま成長すると、川や海、プールといった水辺での行動判断が難しくなります。水難事故の多くは「泳げないから」ではなく、「水への理解や対応力が不足していること」が原因になる場合も多く、基礎的な水泳技能の重要性が改めて問われています。
自治体・学校・民間事業者の連携による“学校水泳の共同プールモデル”の必要性

こうした課題に対し、近年注目されているのが、自治体・学校・民間事業者が連携する「共同プールモデル」です。学校単独でプールを維持するのではなく、民間施設や地域資源を活用することで、安定した指導環境と安全管理を確保する取り組みが進みつつあります。専門的な指導者による水泳指導や、放課後・休日の活用によって、学習機会を補完できる点もメリットです。水泳教育を“学校だけの問題”とせず、地域全体で支える仕組みづくりが求められています。
地域・自治体が取り組むべき「学校水泳 × 健康支援」の新しい形
学校プール削減が進む中、「水泳教育をどう補うか」は各家庭だけに委ねられる問題ではなくなっています。子どもの体力低下や泳力低下は、将来的な健康リスクや安全面にも直結するため、地域・自治体が主体となって支える仕組みづくりが不可欠です。今後は学校水泳を起点に、地域全体で子どもの健康と運動習慣を支援する新しいモデルが求められています。
放課後・休日も利用できる“水泳サポートプログラム”の必要性
限られた授業時間だけでは、基礎泳力や全身持久力を十分に身につけることは難しいのが現状です。そこで注目されているのが、放課後や休日を活用した水泳サポートプログラムです。自治体が公共プールや民間施設と連携することで、学校外でも継続的に水に触れられる環境を整えることができます。
こうした取り組みには、次のようなメリットがあります。
・授業回数不足を補い、25m完泳や基礎泳力の定着を図れる
・運動機会減少による体力低下や肥満予防につながる
・家庭環境に左右されにくい公平な学習機会を確保できる
学校水泳を「一時的な授業」ではなく、「継続的な健康支援」へと広げることが重要となってきているのです。
保護者・地域ボランティアの協働で安全性と教育機会を拡大
水泳支援を地域に広げる際、指導者や見守り人員の確保は大きな課題となります。その解決策の一つが、保護者や地域ボランティアとの協働です。専門指導はプロが担い、見守りや補助を地域が支えることで、安全性と実施可能性の両立が図れます。
具体的には、
・保護者による見守り参加で安全管理を強化
・地域人材の活用による人手不足の解消
・子どもを地域全体で育てる意識の醸成
といった効果が期待できます。保護者にとっても「誰が見ているかわからない不安」が減り、安心して子どもを参加させられる環境づくりにつながります。
行動変容を促す“フィットネス×学校水泳”の統合プログラム設計
水泳の機会を一過性で終わらせず、日常的な運動習慣へとつなげる視点も欠かせません。水泳と陸上での基礎運動を組み合わせた統合プログラムは、子ども自身の「体を動かす意識」を育てるうえで効果的です。
たとえば、
・水泳で心肺機能・全身持久力を強化
・陸上運動で体幹や柔軟性を補完
・成長段階に応じた運動内容で無理なく継続
といった設計により、運動が「特別なイベント」ではなく「生活の一部」へと変わっていきます。学校水泳を起点に、長期的な健康づくりを支える仕組みを構築することが、地域・自治体に求められています。
まとめ:学校プール削減の今こそ、自治体・学校・家庭が連携すべきタイミング

学校プール削減や体力低下は、どこか一つの立場だけで解決できる問題ではありません。だからこそ今求められるのは、「誰かがやってくれる」ではなく、親・学校・自治体がそれぞれの役割を理解し、連携する視点です。子どもの健康や安全は、制度の隙間に置かれてよいものではなく、地域全体で守るべき共通の基盤だと言えるでしょう。
保護者ができるのは「完璧な対策」ではなく、関心を持ち続けること
すべての家庭が水泳教室に通わせたり、十分な運動環境を整えたりできるわけではありません。大切なのは、できる範囲で子どもの運動状況に目を向け、変化に気づくことです。
「最近あまり体を動かしていない」「水に対して不安が強そう」といった小さな気づきが、次の行動につながります。親の関心は、子どもにとって運動や健康を“大事にしていいもの”だと認識するきっかけになります。
自治体には“教育格差を広げない仕組み”づくりが求められている
水泳や運動機会が家庭環境に左右されやすくなっている今、自治体の役割はますます重要です。学校単位では対応が難しい課題も、地域全体で見れば解決の選択肢は広がります。
公共施設の活用、民間事業者との連携、継続可能な予算設計など、「一部の子どもだけが取り残されない」仕組みづくりは、自治体だからこそ実現できる領域です
子どもの体力は“将来の社会基盤”──今の選択が10年後を左右する
体力や泳力は、単なる体育の成績ではなく、生涯にわたる健康や安全に直結する重要な基礎力です。今このタイミングで水泳や運動環境をどう位置づけるかは、10年後、20年後の子どもたちのQOLや社会参加にも影響を与えます。家庭・学校・自治体がそれぞれの立場で課題を共有し、実行可能な形を模索していくことが、これからの時代には欠かせません。
学校水泳の在り方や、放課後・休日の水泳支援、地域連携の仕組みづくりについて「何から始めればよいかわからない」という場合は、専門事業者に相談することも一つの選択肢です。現場状況に応じた支援事例を知ることで、無理のない第一歩が見えてきます。
こうした課題に対し、COSPAウエルネスでは、学校や自治体と連携しながら、子どもたちの基礎泳力や水慣れを支える「学校水泳授業支援サービス」を提供しています。授業回数の減少や指導体制の課題といった現場の声を踏まえ、安全性と継続性の両立を重視した支援を行っている点が特徴です。まずは、気軽にお問い合わせください。
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